篠笛協会よりのメルマガ。月1回で配信いたしております。
篠笛奏者のちょっとコアなお話、篠笛協会の会員様限定で過去のメルマガコラムを集めてみよう企画は当協会会報2号でも行っているのですが、メルマガ配信はそれ以後も続けておりますので、「会員さま限定」で「メルマガ コラム集」ページを作成致しました。
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2016年5月メルマガ08号より
また口内炎ができてしまった。
そして、そこを重ねて噛む、という。
アパチュアを小さくする動きがちょうど痛みとベストマッチしてしまうので、
高音部は吹きたくありません。
本番に合わせて口内炎を作るというのがわたしの常で、
ストレスなんでしょうか・・・。
そうはいっても、仕方ありません。
いつぞやは舌の先に出来て、
タンギングすると激痛でした。
それなのに、アドリヴで、超高速ダブルタンギングを連発し、
それを知った太鼓のメンバーは演奏中にバカ受けしていました。
なにやってんだよーと言われた言葉は、そのまま自分に返しましたが、
管楽器奏者にとって、口内炎はかなりのハードルですね。
ベストの状態で臨むのがプロだ、とかなんだとか、
そんなこといわれてもですね、
生きてて口内炎くらいできますわ。
風邪だってひきますよ。
でもそんなことでプロ失格だなんて、わたしは全然思わないんです。
笛を吹くのはわたしの人生そのもの、暮らしとおんなじだから。
しかし、餃子のタレはしみる・・・・
避けた方がいいです。
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2016年5月メルマガ08号より 耳よりなお話
「笛は遠音が指す」といわれます。
横笛のなかでも日本のそれは、本当に遠くまで音が届きます。
そうはいっても、吹いている本人にはよくわからないんですね。
音の発信地にいつもいるしかありませんから。
そこで。
仲間で集まりました。
松尾慧さん、森美和子さんとわたし、朱鷺たたら。
3人で聞きあいっこして、一体本当に遠くまで聞こえるのか、
高い調子の笛の方がよく通るのか、といったことを実験したのです。
3人が持ち寄った笛が全部で56本・・・・。
多すぎひん・・・?
これ、全部試すの?
はい、試しました。
場所はまず白樺の林のなか。
これが最高~!
吹き手の姿が見えないあたりまで、2人は離れて待機。
すると、木立の奥の方から、笛の音が、
まるで笛の妖精が森を抜けていく姿を目の当たりにするかのように、
音が実体を伴って通り過ぎていくようでした。
とっても素敵!
ああ、みなさんにもお聞かせしたいものです。
(でも野外コンサートは準備大変だし、とてもじゃないが主宰できません・・・)
すごく離れたところで吹いてもらっても、全く問題なく聞こえます。
姿が見えるくらいの近さだと、逆に面白みがありませんでした。
木々に音が反射して、音が遠くから近づいてきて、通り過ぎていくのが目に見えるような、そんな聞こえ方だったのです。
吹く本人の感覚では、自然なリバーヴがかかって、フレーズの最後まで処理しな くて済むような、楽ちんで、気持ちのいい響きでした。
次は、開けただだっ広いキャベツ畑。
周囲にさえぎるものがほとんどありません。
遠くにアルプス山脈が青く見えています。
こういう場所は思った通り吹いてて、しんどい。
音が響かない、デッドです。
聞く側は、吹き手がはるか遠くの山脈を背にしていたら、
音は思いのほか聞こえてくるが、背になにも追わなければ、
ほとんど聞こえません。
拡散していってしまったようでした。
海岸や山頂でも同じような感じです。
さて、調子でいうと、低いかなと思った3本調子は十分に遠音が指しました。
低い音域も全く問題ないです。
逆に高い調子は7本調子から上になると、同じような聞こえ方です。
6本調子くらいまでが、呂の音域はそれなりの低い感じが魅力的に出せて、しっかり遠音も指すので、
野外で演奏する際は、遠音を聴かせたいならば、
3本調子から6本調子までのものを使えば、安心なんじゃない?というのが3人で出した結論でした。
2日間、たくさん笛をとっかえひっかえ、吹きました。
遠音って素敵!というのを実感しつつ、
自分の音を遠音で聴けることはあり得ないんやなあ・・・という、
当たり前ですが、やはり残念な気持ちも持ちました。
ずいぶん距離が離れていても、なにか反射するものがあれば
笛の音は野外でも十分に通っていきます。
近くても、家の角を曲がるとか、そういったことだけでも聞こえ方は変わります。
いろいろ試されてみてはいかがでしょう?
それにしても、最高だったのは白樺の木立です。
お勧め!です。
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2016年4月メルマガ08号より 耳よりなお話
さて、先日テレビを見ていました。
武井壮さんという元陸上競技選手で十種競技元日本チャンピオンがお話をされて
いました。
スポーツがものすごくできる人なんやなあ・・という程度の認識しかなかったの ですが、彼が「データ魔」である、というので、耳が吸い寄せられました。
なんと、毎日の気温や体温、着ている服の素材(!)までもをを書き留め、自分のその日の練習記録と照らし合わせて、最強の状態を探す、というのです。一番回復の速い睡眠がとれたときの状況も、思い出して再現しようとして、探 す、というのです。
服の素材、というところでその着眼点に野性的な本能を感じて、感服しました。
ちなみに「コットン」を身に着けていると調子がよいそうです。(武井さんの場合です)
さすが、ですね。出てくる杭は、出てくるだけ、他となにか違いがあるんやなあと痛感しました。
笛の稽古でもデータは大切です。
例えば、アパチュア(息の出てくる、唇に開いた孔)。
アパチュアの設置位置が歌口の鳴るポイントとずれていたら、
まず音はかすれるか、そもそも出ません。
しかし、何気なく唇の中央に歌口をあてがってしまう方、多いですね。それぞれの歯並びや骨格の違いで、アパチュアが唇の中央に開くとは限りませんので、鏡で確認してみましょう。
思ったより、左や右にずれているかもしれませんよ。
位置を調整できれば、音が抜群に変わることも珍しくありません。
笛のエッジにたいしてどういう角度で息を吹き付ければ、鳴りやすいか、ということも、音の観察とともに、鏡で自分の唇の状態(アンブシュア)を観察していきます。
そうするとだんだんデータが取れてきます。
かくいう私も、結構マニアックにアンブシュアとアパチュアは観察してきました。
おかげで、音がうまく当たらずに困っている生徒さんの状態をみると、大体なにが問題になっているかわかります。
自分のデータ照らし合わせているからです。
ところが、音が出ないと苦しむ途上の生徒さんは、出ないと途端に笛を外してしまいます。
歌口を疑り深い目でちらりとみるのですが、・・・・勿体ない!
「出ない原因を探るにもってこいのデータが、開示されていたのに、なんで外しちゃうの~!」
わたしはマニアックに叫びます。
冗談めかしていますが、音が出る、出ないには原因があります。
音が出るメカニズムを理解できていれば、あとはよりより音を出すための原因を探る稽古を積めば、最短距離でフォームの修正ができます。
間違ったフォームを毎日練習して、それが一番うまくできるようになってしまうのは・・・怖いですよね。
そういう意味で、先生について、フォームの確認や修正をするのがやはり一番よい稽古だと思います。
プロの技を盗むにしても、なにに注目するのか、わからなければ比較検討できませんが、日頃から自分のだけでよいので、データを持っていると、気づきがあるはずです。
そして自信にも繋がります。
普段と本番では、体調の変化なども観察して、こういう傾向がある、といった データを持つと対処方法も見えてきますよね。
ぜひみなさん、ご自身のことを一番知るのは、自分しかない、という自覚をもって、手鏡を譜面台にご準備いただいて、お稽古してみてください。
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2016年3月メルマガ07号より 耳よりなお話
桜が咲き始めましたね。
自宅は森に囲まれています。
真っ白な木蓮が咲くと、まもなく桜だなあ~と待ち遠しい日々を過ごします。
お花見の席で一曲、しっとりと笛を奏でられたら恰好いいですよね。さて、今回は笛で遊ぼう~!
ということで、遊び方手始め、ご紹介したいと思います。数字譜、みなさんお使いだと思います。
数字で音の高さを表した記譜法で、ハーモニカも同じものを使っているようです。
(のばら社のポケット版の曲集は、音符の下に数字が振ってあるものがあって、
かなり便利ですよ。)数字を音として読めてしまう少数派の篠笛吹きですから、
これを使わないともったいない!
まず、ご自分の誕生日を吹いてみましょう。
昭和○○、○月○日。
これでいくつか4つから6つの音が揃いますね。
9月の方は、9という音がありませんから、
3・3・3と指打ちしてもいいし、
4・5とか、1・6・2とか、いろいろ前後の音とうまくメロディックに繋がるように、アレンジしてみましょう。お仲間の誕生日も吹いてみると、その方の性格を表したようなメロディが流れてきたりして、
これが想像以上に面白いですよ。他に、電話番号や番地を吹いてみたりして、どんどん遊んでみましょう。
わたしはいろいろな場面で設定しなければならない暗証番号に曲を使っています。
銀行口座を、○○銀行はたとえば「さくら」だったら、「223~223~」がメロディの冒頭ですので、
4桁なら「2232」とやるわけです。
ATMの前で、キーをたたきながら、「ふんふんふ~ん」とさくらを口ずさみます。
これが時々、なんの曲にしていたか忘れてしまうのです。
焦りながら、後ろに並んでいる人の視線も感じつつ、
「ふんふんふ~ん・・・・、あ!違った?えっと、笛吹き童子だっけ?」
みたいなことをしていますから、
ちょっと変な人かもしれません。。通帳に忘れないようにと、暗証番号書いてしまうのは絶対にやめた方がいいですが、
曲名ならOKじゃないでしょうか?
篠笛吹き以外にはわからないはず。こういう音にもうひとつ別の意味を持たせるような遊びは、
あの偉大なバッハもやっているんですよ。
BACHというのがバッハの名前の表記ですが、
Bはドイツ語音名でシ♭、Aはラ、Cはド、Hはシです。
この4つの音を象徴的に曲の中に組み込んでいるんです。
なかなかマニアックな遊び方ではありませんか。
みなさんも、どんどん遊んでください。
思いがけない素敵なメロディに出会えるかもしれません。
(朱鷺たたら:文)